酒とイバラの日々

例の急性胃腸炎入院事件から一週間が経ちました。年齢のせいか退院をしてもすっきりさっぱり回復という訳には行かず、体調は薄紙をはぐ様に少しずつ復旧しています。しかし未だ酒を飲む気にはなれません。

さて、本日10月1日を期して当社は第78期のスタートを切りました。前期はどうやらそこそこの業績で締めくくることができましたが、今期は何と言っても金融混乱.世界恐慌といった最悪の状況下での会社経営となりますので、死力を尽くさねばなるまいと覚悟しております。ただ、環境の悪さを嘆いたり棚からぼた餅的なことを期待していてもしょうがないので、今までどおり淡々と社員力.商品力.販売力.情報発信力.海外販売力を鍛えつつ、コストや経費の適正化にも厳しく取り組んで、「上質な真澄をお客様にお届けする」「真澄でお客様の食卓を和やかにする」「人と街と地球に優しい真澄になる」「真澄を世界の美酒に進化させる」という夢の実現に一歩でも半歩でも近づきたいと思います。

何かと悪しきことが重なった9月が終わって、日本酒の月10月が到来。心機一転のつもりで本日眼鏡を変えました。北大路魯山人ばりのまん丸フレームです。皆様にも幸多き一ケ月になることを酒神松尾大明神にお祈りしております。

 

 

2008年10月 1日 11:18



NYツアー急遽キャンセル

前回のブログで「来週はNYで得意先回り」と書いた私が何故か諏訪におります。理由は後述致します。

9月14日: しばらく前に諏訪市内の清酒メーカー五社が語らって「諏訪五蔵(すわごくら)」という団体を立ち上げました。国道20号線(旧甲州街道)沿いのごく狭いエリアに立地している5社の酒蔵が手を取り合えば、街の活性化にも日本酒の需要振興にももっと力を発揮できると考えてのことです。今後、地元の方々も、遠来のお客様も、私たち自身も楽しめるイベントを連発させる計画ですが、その第一弾として、霧が峰ゴミ拾いウオークを開催しました。五社の酒蔵はいずれも霧が峰を源とする仕込水で酒を造っているため、新酒の仕込みを始めるに当たって感謝の気持ちを行動に表そうという訳です。当日は各社の社長やその家族.従業員など約35名が早朝から草原に集合。NPO霧が峰基金の皆さんの引率により3コースに分かれて道路沿いのゴミを拾いました。ハイカーのマナーが向上したのか期待していたほどゴミは落ちておらず気抜けしましたが、晴天の高原を他蔵の社員さんたちとワイワイ言いながら歩き回り、最後は社長夫人達が大鍋で作ったトン汁とオニギリの昼食に大満足。本当にハッピーな半日でした。今年は初回なので内輪のイベントにしましたが、将来的には五蔵ファンのお客様も交えたイベントにしたいと思っています。   山から下り一風呂+昼寝の後上京。

9月15日.16日:東京にて様々な業者と商品造り系の打ち合わせの後、日本酒の輸出について議論する「海外戦略委員会」の委員を拝命したため酒造組合中央会で初会議。私はもとより浅学非才なのですが最善を尽くすつもりでいるのです。なぜなら多くの酒蔵が国際市場に目を向け保守的な業界に新風が吹き込むことで必ず国内市場が活性化されると考えるからです。

9月17日:午前中京王プラザホテルのラウンジで2社の資材業者さんと面談。13:00からは日本名門酒会という地酒専門の流通グループの展示会へ。多くの人気メーカーがブースを出展し、酒販店や料飲店の方々が全国から集まるこの展示会は当社にとっても重要なビジネスチャンスなので、東京営業所のスタッフ全員に大学4年になった長男坊をも加えて万全の体制で臨みました。幸い真澄ブースへは多くのお客様にお立ち寄り下さり私も立ちっぱなししゃべり通しで奮戦、充実感にみちた展示会でした。

ところがブースが空いた4時頃、トイレに入って直に事件は起きました。胃の下あたりにわずかに生じたシクシク感が急速に増幅して腸全体に拡大。アレレと思っている間にあまり経験のない七転八倒の痛みに変わったのです。じっとしていれば何とかなる筈とトイレの中で蹲っていても痛みは増すばかりで、その内どうした訳か大量の冷や汗が滴り、体温も下がって体中に震えが来ました。ここに到って自力回復を断念。長男と竹内東京営業所長の肩に担がれて、某総合病院へ緊急入院と相成りました。お恥ずかしい仕儀です。

担ぎ込まれてから翌日一杯は腹痛と発熱と腰痛で何があったのかボンヤリとしか覚えていません。翌日諏訪から駆けつけた家内がお医者様に伺ったところ病名は急性胃腸炎。疲労が蓄積していた所へ英国出張での食べ過ぎか卑しいつまみ食いがたたったんでしょう。心配いりませんが、この際しばらく病院に閉じ込めて痩せさせたらどうでしょうというご託宣だったそうです。

という訳で足掛け4日間の入院。最初の二日間は点滴以外は絶食.絶水。後の二日は三食とも重湯というかつて経験のない数日を過ごしました。もちろんNY出張はキャンセルです。実は私はかねがね入院というものに淡い憧れを感じておりました。静かな病室で好きな本を読み放題、若くて優しい看護婦さん、花束を抱えてやって来る見舞い客、やかましい仕事の電話からも売上げ数字からも完全解放。しかし痛むお腹を抱えて現実はこううまくは行きませんでした。随分長い文章になってしまいましたので、病院でのあれこれはまた機会を改めてご報告します。お陰様で22日からは完全復帰しております。多くの方々に多大のご心配とご迷惑をお掛けしました。心より御礼申し上げます。

2008年9月23日 17:10



ロンドン大好き!

永のご無沙汰誠に失礼。価格改訂、製造計画の立案、新米の手配などなどで旧盆過ぎから物理的にも精神的にもぼろぼろの半月が続き、挙句の果てに9月の第一週はロンドンへ出張していたのでかくの如き体たらくになたのです。誰がこんな無茶苦茶なスケジュールを組んだのでしょう! はい、それは無計画な私自身です。ともあれ、信じがたいことながら拙文を読んでくださる酔狂な方々がけっこうおいでのようで、ちょっとサボると直接私に、または会社あてにもお叱りが寄せられるようなので、今後は心して更新に励みます。

さてこの数週間の特記事項は何と言ってもロンドンへの渡航です。ロンドンでIWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)というワインの品評会が開催されています。ものすごく権威のある品評会なのだそうですが、様々な人々の努力が実って日本酒部門が設けられたというので、何種類かの真澄を出品してみたところ、思いがけず本醸造の部で「特撰真澄」がゴールドメダルを受賞しました。実のところその時点ではIWCの詳細については無知でしたので、「アッそう 良かったね」とか言っていたのですが、主催者側、仲立ちをしてくれている人たちから、「寝ぼけたことを言ってもらっては困る。羽織袴の礼装で授賞式に参加せよ!」と厳命がくだり、しぶしぶ渡英することになったのです。実は私はロンドンはかなり苦手。3年前の6月に訪れた彼の地は、物価が高く、ホテルのエアコンは効かず、飯は不味く、商売はうまく行かず、鼻にかかった英語の発音が聞き取れず、その上帰国3日後に例のテロ事件が勃発。「ここだけははこりごり」と広言してはばからない街だったのです。

しかし今回の7日間で私はすっかり宗旨変え。今や熱烈なロンドンファンと化し、来春大学を卒業する長男に英国留学を強要している有様です。その理由は・・・・・・

①町並みが綺麗で散歩が楽しい。②伝統的なイングリッシュブレックファストが質量共にグッド。③NYにも劣らない高レベルの日本食レストランが多い。④アメリカほど日本食が現地風にアレンジされておらず正統さを保っている。⑤レストランのスタッフが日本酒を高級ワインと同等にリスペクトしてくれている。⑤一軒のレストランで資本はアラブや中国人.ソムリエはフランス人.インテリアデザインはイタリア人.料理は日本人.サービスはロシア人.マネージャーはイギリス人といった具合に国際最適分業が行われていている。⑥覗いてみたい店やレストランが沢山ある。イギリスについては一度に書き切れないので、また後日。

日本酒も国際的になったもので、この時期は欧米各地で日本酒に関するイベントが開催されており、実は様々な日本酒メーカーの社長や若旦那達が世界中を走り回っています。私めも老体に鞭を打って今月末にはNYへ渡って得意先回りに奔走します。また更新頻度が落ちるかもしれませんが、お赦しを。

2008年9月13日 16:16




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宮坂 直孝
諏訪市出身 諏訪市在住
真澄蔵元 宮坂醸造株式会社 代表取締役社長
申年、うお座、A型。
趣味は老舗巡り、バードウォッチング、諏訪湖でのカヌー遊び、たき火、読書。